オトコオミナエシ
樹林を伐採して明るくなった林道沿いに生育。
大阪府和泉市 2005.9.8
もどる
 オトコオミナエシは,オミナエシP. scabiosifolia Fisch.とオトコエシP. villosa(Thunb.)Juss.の自然雑種とされています。オミナエシとオトコエシは,それぞれ女性(オミナ)と男性(オトコ)にみたててつけられた名前で,漢字で書くとそれぞれ「女郎花」,「男郎花」と書きます。その雑種ということで,オトコオミナエシ(男女郎花?)と名づけられました。
 オミナエシは黄花で果実に翼がないのに対し,オトコエシは白花で果実に翼があることで,この2種は区別できます。この2種とオトコオミナエシの識別点は,花色がオトコエシのような純白ではなく,オミナエシのような鮮やかな黄色でもない淡い黄〜緑白色であることとされています。このほか,オミナエシの葉は緑色が濃いのに対し,オトコエシは白っぽく,くすんだ色調をしていますが,オトコオミナエシは両者の中間的な,比較的濃い色調です。これは毛の多少も反映しているようです。また,葉の裂片はオトコエシが丸みを帯び,オミナエシは狭くて鋭いのに対し,オトコオミナエシはこれも中間的です。ただし鋸歯はオミナエシに似て鋭いようです。また,オトコオミナエシは花序の包葉が線形なのに長く,オトコエシやオミナエシより目立つようです。ただし,果実はオトコエシと同じように翼があります。以上のように,両者の中間的な形質をたくさんそなえているので,雑種だといわれると「確かに!」と納得してしまいます。
 しかし,オトコオミナエシの姿は全体的にオトコエシに似ています。花は黄みがかっているとはいえ,オミナエシに似ているとはとてもいえません。オトコエシと間違うことがあっても,オミナエシと間違うことはないでしょう。オトコオミナエシは本当に雑種でしょうか?
 写真のオトコオミナエシは樹林の伐採によって,光が差し込むようになった林道沿いに出現したものです。この樹林の伐採跡には,オトコエシもたくさんみられます。これらの植物は樹林に覆われていた時にはまったくみられず,伐採後1年目に出現しました。これは土壌中で休眠していた種子が,伐採による光・温度条件の変化により覚醒し,発芽したものと考えられます。箕面川ダムでも1988年,伐採後数年たった跡地に,オトコオミナエシが大量に生えたことがあります。しかし,翌年にはまったく消えてしまいました。
 いずれにしても,オトコオミナエシは雑種でありながら結実しているようです。実際,現地でもオトコオミナエシの結実が確認できました。ただし植物は雑種であっても結実する場合もたくさんありますので,結実するからといって雑種説を否定することはできません。
 しかし雑種ができるには,オトコエシだけでなく,オミナエシも必要になります。しかしこの伐採跡は植林に囲まれていて,オミナエシが生育できるような草原はほとんどありません。交雑しているのであれば,オミナエシが近くにあってもよいはずです。しかし写真を撮影した場所の近傍に,オミナエシはみあたりませんでした。ただし埋土種子起源ということになると,今,近くにオミナエシがないからといっても,過去には近くにオミナエシが生えていたのかも知れません。箕面川ダムでは当時,オトコエシはふつうにあり,オミナエシはわずかながら生えていました。
 とはいうものの,断固としてオトコオミナエシが雑種ではないと確信しているのではなくて,オトコオミナエシは分類的にも,生態的にも,まだまだ多くの謎があるような気がします。雑種か否かは遺伝子レベルの研究をすれば簡単にはっきりするでしょう。しかしこれまで信じられてきたことを鵜呑みにしていては,こうした研究すらされることはありません。重要なことは,当たり前とされていることであっても,まず自分なりに疑問を持つことではないでしょうか。それが新しい発見へと繋がるはずです。
オトコオミエシ Patrinia × hybrida Makino
オトコオミナエシの花
淡い黄〜緑色。
patrinia X hybrida
Patrinia villosa
patrinia X hybrida
patrinia X hybrida
オトコエシの花
白色。
オトコオミナエシの果実
果実には広い翼がある。
オトコオミナエシの葉
オトコエシよりも毛が少なく、やや色が濃くみえる。